2010年9月2日木曜日

「水木しげる・妖怪図鑑」兵庫県立美術館

 代休とって"R"ising初日です。ギリギリ入りに間に合って渡す物を渡して(新鮮なネタは新鮮なうちに食卓へお届けしました)…初日は16時きっくおf……開演。もう、もうさ、私がブログやらTwitterで1幕2幕を前半後半って言ったり幕間をハーフタイムって言ったりカテコをロスタイムって言ったりするのは雰囲気で察して置き換えて下さい。時間配分が似てるからつい言い間違える。
 それはさておき、16時までとっっっても時間があるので以前から行きたかった兵庫県立美術館に行ってきました。18切符だからJR乗り放題だしね! 時間があるので各停、そして爆睡。で、行ってきました水木しげる展。

 すっっごいわ。何この密度っていうか濃度。

 チケ売り場の所に「ただいまの待ち時間」って表示があって、当然今日は平日の午前中だったから0分だった訳だけれど…これは確かに待ち時間出るわ。展示室も3つ使ってて、タダでさえこの美術館、1フロアあたりの床面積広いのに…そこに妖怪の原画がずらっと展示されてるのが2部屋と、子供向けに鬼太郎ワールドが1部屋。

 妖怪原画は里の妖怪・山の妖怪・水の妖怪、と妖怪の住処に応じて3つに分けられてて、それぞれ墨絵の原画か、着色したもの(これも実物)、或いはその両方が展示されてる。…なんていうか、水木しげるのイラストってホントに背景の書き込みがもの凄い。ともすれば人物はとてもデフォルメされているのに、背景の書き込みはハンパない。凄く勝手な感想なんだけど、妖怪が存在しうる背景(実際の景色だけでなく精神的なバックグラウンド)こそが妖怪の存在意義なのかな、と。妖怪が存在しうる『闇』は『外』を照らす灯りで明治時代以後にどんどん都会から鄙へと追いやられて、今では田舎でもそんな『闇』はないよね。だからこういう『外の闇』に棲む、自然に生きる妖怪はもう新しく産まれる事はないんじゃないかな。逆に、外を明るくしすぎた為に、内側に今度は影が出来て来てるのが特に昭和以後なんじゃないかな、と。ドーナツ化現象というか。そういう内側にできた影に棲むのが口裂け女とかの現代妖怪。恐怖の対象がかつての自然と一致した妖怪(恐いのは概念的なもの)から、より現実的な…というか、現代妖怪が古来の妖怪に比べて人の形を取ってて人に危害を加える割合が高いのはそういう『他人に危害を加えられる』事に対する恐怖感があるのかな。とか。
 まぁそんなことをつらつら考えたりしつつ展示を見ていた訳ですよ。…ええ、こういう民俗学的なのも大好きです。
 それから、浮世絵(化物絵)も何点か展示されてて、図録にも掲載されているのだけれど。…誤解を恐れずに言うなら、化物絵と春画はホントに紙一重だな、と。あの生々しい人間同士(たまに異種交合もあるけど)のまぐわいを描いた春画に対して、化物絵はなんていうか…こう…ちょっと穿った角度からのエロスというか…デカダンス的なというか…。直接的な生身のエロスではなくて、…ちょっとニッチなニーズというか。普通のとソフトSMとか言うと大変に語弊があるんだけど、まぁそんな感じ。月岡芳年の化物絵とかとくにそんなん。妊婦が上半身裸で逆さづりにされて、今まさに山姥によってその腹を割かれそうになってる…とかいう浮世絵。とても退廃的なエロスがそこにある。これは展示されてなかった気がするな…。展示されてたのでは薄田隼人を主人公にした化物草子の一部で、美男子として描かれた薄田隼人と、それに助けられる美女(上半身裸で妖怪の前に縛られてる)とかね。ああ、そう、諧謔心をそそられるエロスだ(やっとそれっぽい言葉出てきた)。
 あと、化物絵は娯楽絵だから、風刺のニュアンスが強いのや、だまし絵やら、クスッとするようなのも沢山ある。今回はそういう展示はなかったけど、ミュージアムショップにこの本(→)が置かれてた。夏前くらいに出た本だっけ。そうそう読んだ読んだ。これほんっとに面白いんだ。割っちゃった皿を修理に出す更屋敷の幽霊とかホントシュール。
 原画、浮世絵(掛け軸もあった)と展示があって、次が子供向けの鬼太郎コーナー。子供向けの明るいお化け屋敷みたいなもんなんだけど(いくつか人形がおいてあって)、大人でも楽しい。合わせ鏡みたいなホログラムに囲まれた一角があって、そこに立つと上も下も妖怪でびっしりに見える。でもホロだから明るくて、光の中に妖怪があふれてるように見える。…すごくキレイ。
 あと、入口の所で一旦木綿に座って写真が撮れるよ。私はおひとりさまだから一旦木綿だけを写メって来たけど。
 ミュージアムショップで売られてる妖怪道五十三次のポスカがホントに素敵で全部欲しいんだけどなかなか…っていうか京都と日本橋が品切れになってた…残念ー。
 最後駆け足になったけどホントに面白かった!! 妖怪好きは行くべきマジで! すっごい楽しい。2時間くらいあっという間。

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