『心は鍛えるものではなく、整えるものだ。いかなる時も安定した心を備えることが、常に力と結果を出せる秘訣だ。自分自身に打ち勝てない人間が、ピッチで勝てるわけがない。』まず、私は普段こういう『啓発本』の類は一切読まないです。理由は明確、「どこの誰とも知らない人のメンタル論は読みたくない」から。いうなれば食わず嫌いみたいなもんです。けど啓発本ってとても当たり外れが大きいジャンルで、同意できるかどうかは読む前には未知数。推理小説等はある程度想定される読了感(事件解決であるとか、シリーズ途中なら次への展開とか)があるけれど、啓発本は「すごくすっきりする」から「全く同意できなくてもやもやする」まで幅がひろすぎる。あと、著者をどの程度知ってるかで全然歩み寄りの幅も違うし。
日本代表キャプテンとして、チームを勝利へ導いた男の実践的メンタルコントロール術。
だからこそ、長谷部誠というサッカー選手を知った上で読むこの本はすごく、すっきりする。
たとえば、勝間和代という人が何がしか書いておられても、私は彼女がどういう人なのか、職業すら知りません。専門がどちらなのかも知りません。なんか有名な人ー? くらいの認識です。著者に対してこの程度の認識しかないと、たとえ内容がとても具体的で、啓発に富んだ内容でも、受け入れる側はぼんやりしたイメージしか受け入れられないことが多いのではないかと思う。っていうか私はそう。
例えが悪いけど、ダイヤルアップ接続の下り回線みたいな感じ。ちょろちょろしか入ってこない。
けどこれはブロードバンド。ほんとにスイスイ入ってくる。それは私が長谷部誠というサッカー選手を知っていて、日本代表でキャプテンを務めた選手であること、現在ドイツにいること…などを予備知識と知っているから、ってのがきっと大きいんだと思う。
あと、よくある「心を強く」ではなく「心を整える」という視点なのもほっとする。特別なことは何もなくて、それだからこそなんでもない(と思うような)事をプロ意識をもってやっている長谷部を尊敬する。…尊敬すると言いながら呼び捨てなんだけども今更長谷部さん、なんて言うのも白々しいわな…。
でもなんか、ほんとになんでもない、感動させるようなエピソードでもなんでもないのに、何でか読んでると涙が出てくる。何でやろ。エピソードの背景というか、その『時』の事を覚えてるから無意識に振り返ってしまうんやろか。
章立てもだけど、1節1節がとても短く区切られているので、1日1節ずつゆっくり読むのもいいかもしれない。ほんとに文体も飾り気がなくて、すっとしてるんだけど、それでいて本人が心がけていることだからとても重みがある。実感があるというか。
3/17が発売日で、まだ5月なのにもう私が買ったのは第10刷。これは…かなり早いペースなんじゃ…。また、おそらく2刷以降に書き足されたのだろう、「印税は東日本大震災支援へ全額寄付」の文字がありました。
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