2012年7月11日水曜日

「浮世絵に見る江戸美人の化粧 白、紅、黒―三色の美」ニューオータニ美術館

 7/8まで開催のニューオータニ美術館の展示を最終日に見てきました。白、紅、黒はそれぞれ「白粉の白」「口紅の紅」「お歯黒と眉化粧の黒」で、それぞれについて浮世絵と化粧道具が展示されていました。
 展示品の主な所有者はポーラ研究所で、なるほど化粧品メーカー、と印象アップ。江戸期の美人画にはそれぞれの店(勤務先)や、描かれてる化粧品の店構えが小窓に描かれてたりで、勤務先が描かれてる場合はそれこそ「看板娘」で、商品扱う店が描かれてる場合は「販促チラシ」みたいなものかと。そういえばどこかの茶屋の娘が大層美人でファッションリーダーになってたとかいう話をどこかで見かけたな…芸者や遊女や歌舞伎役者がいわゆるプロで、ファッションリーダーやった時代に茶屋の娘(看板娘)となるとさしずめ読モみたいな感じだろうか。

 それはさておき、江戸末期〜大正時代まで重版重ねた化粧のTPOのノウハウ本(版木が消失して絶版になるまで150年間版を重ねたロングセラー)が展示されてたんだけど、大正時代でもそんな崩し字の本が出回ってたのね…。また、身分や年齢によって異なる眉化粧の方法を解説した本もあって、今とは違う意味で化粧にはみんな悩んでたんだなぁ…。

 展示されてた化粧道具はどこかのお武家かな? 橘や五三桐やらがあしらわれた蒔絵の化粧道具が展示されてたのだけれど、誰の所用かは明記されてなかった。
 紅板(今でいうパレットタイプのルージュみたいな)には細かい意匠があしらわれてて、おもしろいなと思ったのはカルタ(百人一首)や茶道具を浮き彫りにしたもの。大体が蝶番の都合で四角いんだけども、刀の鍔をあしらったのもあった。刀装具だと笄に似た意匠の凝らし方だと思った。

 白粉については鼻筋にハイライトを入れるだとか、額はよりキラキラする水銀、それ以外は鉛の白粉と使い分けていたそうで(それもハウトゥ本に書かれてる)、浮世絵でも額は違う色の白が乗せられてた。もちろん水銀や鉛の白粉は体にはよくないんだけど、塗らずにおれない→肌状態悪化→ますます塗る…のスパイラルは程度の差はあれ今も昔も変わらないなぁ…。
 江戸時代にも「化粧水」があったらしいことにもびっくりだけど、説明を読めば「蒸留水」だったらしく…そうか、井戸水生活だから蒸留水って特別なもので売れるのか。作る道具も展示されてて、作り方自体も一般公開されてたらしい。買ってもいいけど作りたければこう、みたいな。
 紅については塗り重ねて玉虫色にてかてかさせるのが一時期流行ったらしく、そこまで塗り重ねられない(紅は高価だし湿度や紫外線に敏感で保管も大変)庶民は下地に墨を塗って同じ効果を得ようとしただとか。
 お歯黒については成人儀礼で虫歯予防の効果があったことも説明されてたんだけど面白かったのは眉化粧の方。公家の「置き眉」は極端な眉化粧だけど、庶民でも子供を産むと眉は全部剃ったんだとか。けど絵に描く時は眉なしにすると水銀老けて見えるから眉も描いたんだとか。これだと「眉あり=若い」っていうシンボルマークなのかな?

 展示スペース自体は広くなかったけど、見やすくて面白い展示でした。説明はかなり絞り込まれていたような感じだけども、博物館でやるような研究・学習に重きを置いた展示ではないから、ホテルのお客さんが軽く見て「へー」で終わるようなさらっとした展示のほうが場所に合ってるのかな。「何」を「どこ」で展示するか、場所と物の組み合わせって大事だなぁ…場所(客層)にあった説明も大事。

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