2010年4月19日月曜日

『溺れる人魚』島田荘司

ポルトガル・リスボン。一人の女性が銃で心臓を撃ち抜き自殺した。彼女の名はアディーノ・シルヴァ。かつてオリンピック女子水泳で金メダルを獲得したスターだった。同日、彼女の家から二キロ離れた自宅でリカルド・コスタ教授が銃で撃たれ死亡する。奇妙なことに二人を貫いた弾丸は同じ銃から発射されたものであり、さらに死亡推定時刻も「同時」であった…。時空を超えた奇跡の弾丸。その軌跡を御手洗潔が追う。
 久々に読んだ(ような気がする)推理本。…『ロスト・シンボル』はちょっと毛色が違うから。
 面白かった。…確かに面白かったんだけど、読み手はかなり選ばれるかもしれない。島田荘司作品は全部書かさず読んでる! って人か、とにかく雑食な人は面白く読めるかもしれない(私は島田荘司作品は全部読んでる訳じゃないから後者区分で面白かった)。
 その理由含め、以下ネタバレもある感想。
 まず、本の紹介文の部分には上の引用部分のように書いてあるけれど、実際『御手洗潔』の出番はとても少ない。表題作を含む短編4作収録で、うち御手洗が出てくるのは2作のみ。名前だけの登場が2作。そういう意味で、紹介文や、実際の本にかけられた帯(内容は上の紹介文と同じ)は完全に『釣り』であって『看板に偽りあり』。時空を越えた弾丸の謎は別に御手洗は一切関与してない(名前だけ数カ所登場したのみ)。この点はハッキリ言って出版社の手違いか手抜きか…本気で釣りなのか。とにかく大ブーイング部分だわ。
 2作目、3作目は歴史の暗部に目を向けた、個人的に島田荘司作品で私が好きな部分。とても深い闇で、これを面白く思うのはどこか背徳感を感じるような気もしなくはない…雑食だからこそ『面白い』と言えるのかもしれない。もちろん、こういうテーマを取り上げること自体が不愉快だと感じる人もきっといるんじゃないかな。
 4作目は最も賛否が分かれる所だと思う。手紙形式なんだけど、『異邦の騎士』を読んでないとほんっっとに何の事かさっぱり解らん。読んでても覚えてなかったら同じようにさっっぱり解らん。ごめん、正直ざっと流して読んだ…3作目までで一旦休憩を挟んだら良かったのかも知れんけれど、続けて読んで3作目からの切り替えと『異邦の騎士』の記憶の発掘に失敗するとホントに何がなんだか解らん一人称の手紙をダラダラと読み続けるだけというとても退屈なラスト1/4が待ってる…いや、誇張でもなんでもなく。

 と言うわけでこの本を読むなら

・御手洗潔が弾丸の謎を鮮やかに解くとは思わないこと。
・3作目まで読んだら一旦休憩すること。
・『異邦の騎士』をあらかじめ読んでおく、もしくは4作目の前に読むこと。

 …ってな所に気をつけるとハズレ感があったとしても小さくて済むんじゃないかな…と。

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