2011年7月21日木曜日

「鬼神曲 考古探偵一法師全の不在」化野燐

 遺跡発掘アルバイトの古屋は、考古学の学芸員・呉から強引に誘われて出雲市に近いD町を訪れた。ここには“鬼の墓”と呼ばれる古墳がある。地元大学の古代史同好会メンバー5人と古屋たちの周りに見え隠れする黒ずくめの眼帯の男。古墳の石室から“鬼の頭蓋骨”が消失したのをきっかけに、不吉な事件の連鎖が起こる。しかし、そんな時に頼りの考古探偵・一法師はここにいない…。大好評、考古学ライトミステリ第2弾。
 1作目が面白かったので読み終わった翌日に買ってきた2冊目です。1作目とリンクする内容もあるので(登場人物の背景とか)、一応先に1冊目を読むほうがいいかな、とは思うけれど、少し毛色が違う2作目なのでそこまで「読んでなきゃイミフ」な事はないです。

 1作目にもまして、シリーズ名になってる『一法師全』が出てきません。ほんとに最後の最後に出てくるだけ。…そういう意味ではシリーズ名に偽りアリ。いや、『不在』と銘打ってるからいなくてもいいのか。けどこういうのはもっとシリーズ重ねてから使う手法じゃないのかなぁ…。
 あと、考古学の要素もあまりない。確かに発掘調査現場という『土木工事現場』ならではの死体処理方法ではあるけれど…。あと、古墳も出てくるけど…どっちかというと建物やその内部構造・備品の構成の方が独特で…うーん…出雲国風土記とかもちらっと出てくるけど考古学…とくに『発掘』っていう感じはないかな。実際に発掘調査も行われてないし(分布調査の様子は出てくるけど)。
 また、1作目が「人ならぬモノ」の存在を大きく扱って、集団ヒステリーとかそういううねりのような、人間の深層心理みたいなものの描写が生々しかったことを思うと、2作目は閉ざされた場所での連続殺人という…あれ、割と普通のミステリーに近づいてる…? といった印象。まぁ殺害方法とかは奇抜なんだけども。
 私の偏った読書履歴だと島田荘司に近いかも。あれは「人ならぬモノ」の陰ほとんどないけど…空気感が島田荘司に似てる気がした。こう、ジメッとした湿度の高い空気感。建物の構造とかは太田忠司の狩野俊介シリーズに出てきそうな感じでもある。

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